「過払い金の時効は,契約終了から10年だそうで……。」
ご無沙汰しております。
ずっと滞っていたコラムの更新をします。
平成21年1月22日,過払い金の時効は,一回一回の支払からでなく,契約終了時(最後の支払)から10年という判決が出ました。
これは最高裁の判決なので,これで決まりです。
何の話をしているか分からないと思うので,別紙の
をみて下さい。クリックすると、別ウィンドウで開きます。
これはある人のサラ金の貸し借りの計算書ですが,左側(①)が高い金利の計算書です。これでいくと平成19年4月24日でようやく完済になってます(「残元金」をみて下さい)。右側が利息制限法(グレーゾーンを再計算した後)の計算書で,これをみると平成6年10月24日から過払いになっています(「残元金」が-3480円になってますね)。
この計算書だと245万円位(「残元金」+「過払利息残額」)の過払金がもらえますね。
左側の①は所詮は違法利率なので,今からは右側(②)だけ見てください。
ここでもし,一回一回の返済のたびに過払金の時効が始まるとすると,今日(これを書いているのは平成21年3月22日)から10年前の平成11年3月22日より前の過払金は時効でなくなってしまうわけです。もしそういう考えをすると,本件の過払い金は約148万円になってしまいます。
(一見,平成11年3月22日までの64万円位のみが減るようにみえますが,もっと減るのです。この理由は難しいのでカット)
しかし最高裁は「違うよ。過払金は,平成19年4月24日から10年経たないとなくならないよ」といったのです。それによれば本件の過払金は約245万円になります。
これは何故でしょう。
法律上たしかに過払金の時効は10年です。ですから,毎回の支払毎に10年で時効でもおかしくはないのです。
しかしよく考えて欲しいのは,普通の人が業者さんと貸し借りをしている最中(これでいうと平成19年以前)に過払金を取り戻そうとしますか?
時効というのは,権利として言えたのにやらなかった人(行使できるのにしなかった人)に対して,『ざまあみろ~権利が消えたぞ!』という制度です。
でも過払金の取り戻しについては,普通の人にとって行使できるのにしなかったという事は一切ない訳ですから,時効でなくなったというのは気の毒です。
そこで最高裁は,『契約が終わるまでは,過払金を返還してくれという権利は行使できないよね(そもそも気付かないし)。だから契約が終わってから10年は時効にしないよ。もしそれでも契約終了後10年経ったら時効ね』という考えをしたのです。
これに対し業者さんは,これじゃ業者が死んでしまう,過去に遡って払うようなひどい考えだといい,又,今後の対策として,みんなに一回今やっている契約を終了させてわざと再契約をすることで,解約した分にについて今から時効をスタートさせようとしています。
しかし,前者は明らかに嘘です。今までもほとんどの場合過去10年分は過払金を返してきましたし,この最高裁での考えでも日々過去10年以上前の分は消えているわけですから無限に過払金が生きているわけではないのです。
又,後者は,形上契約を終わらせ過払金を避けようとしているわけですから,明らかに脱法行為です。
賢い皆さんは,業者のいうことに変に同情せず,又,脱法行為にひっかかからないように十分注意してください。
以上,久々のコラムでした。
次の更新は忙しすぎていつになるかわからないのですが,久々の一句です。
『ドブネズミ(グレーゾーン) お前の命は あと10年』