債務整理シリーズ番外編: 過払い問題の最前線

過払いのお話、その後の動き  (過払い最前線)

いわゆる「一連問題」について


10月23日、債務整理のお話をして終了したはずですが、
ゾンビのように復活です。
というのは過払い計算において

「一連対個別」

という大問題が生じてまして…。
まあ難しい話なのですが、下の文章と、 別表の計算書を見てください。
計算書は非常に長いですが、重要な部分は赤で示してありますので
頑張って読んでみてください。

1.計算書(一連版)

2.計算書(個別版A / B / C)

(Ctrlを押しながらクリックすると、別ウィンドウで閲覧できます。
便利ですので試してみてください。)



● 計算書の解説

まず、この人は
平成4年6月10日にサラ金と付き合い始めて、
平成8年11月28日一旦完済。

その後平成10年5月18日スタート(再開)、
再び平成17年2月16日完済。

さらに平成18年4月12日スタート(再開)、
平成18年10月19日完済という人です。

試しにこれをまとめると、
①.平成4年6月10日 ~平成8年11月28日
②.平成10年5月18日 ~平成17年2月16日   ⇒約2年中断
③.平成18年4月12日 ~平成18年10月19日 ⇒約1年中断

ということになります。

これを全て連続してパソコンソフトに打ち込んだのが、別表の計算書です。
「計算表(一連版)」を見ると、
過払いが157万円ちょっと出る、という計算結果が出ました。(ヤッター!)


●  別々に計算してみると

ところが、「計算表(個別版A・B・C)」のように、
①,②,③を別々に計算すると、

①の過払いが26万9548円です。(計算表・個別版A)
②の過払いが56万2263円です。(計算表・個別版B)
③の過払いが2万8593円です。(計算表・個別版C)

という事は・・?
①+②+③=86万0404円の過払いかな?
と思うとそうはなりません!!

過払いは最後に払った日から10年経つと時効でなくなってしまうので(※)、

①の過払い=   0円(最終支払日のH8.11.28から10年オーバー)
②の過払い=56万2263円(今からみて10年以内)
③の過払い=2万8593円(今からみて10年以内)
となり、

結局、②の過払い+③の過払いのみが加味されて
59万0856円の過払いになってしまうのです。

(※これは裁判上争いがありまして、10年経っても過払いはなくならない!っていう裁判例もあるのですが、一応無難な考えである説に従っておきます。)


● 結局

ずっと一本(一連)157万6581円=の過払い
別々   (個別) 59万0856円=の過払い
で雲泥の差、つまりワラジとオヤジ位違う訳です。


● さあここで問題です。

あなたは過払いの一連計算と個別計算どちらがいいですか。

「馬鹿にするな」と言われますね。
当然私も過払いを一連計算してくれないと困ると思う訳です。


● では裁判だとどうなるの?

良い所に気が付きました。
いつも言っているように過払いでは、裁判しないと過払い金の7割とか元本しか返さないけど、裁判すると過払いの元本も利息も全て返すサラ金は多い訳です。ですから、過払いについては「ちゃんと裁判を起こして勝つ」事が大事なのです。

実は平成19年(つい最近ですね。お互い一年一年、年をとっていきますね~)にこの点、重要な裁判例が出てまして、

要は 1.基本契約が同一なら、間隔が空いても一連ね
2.基本契約が別なら、条件次第ね

というのが裁判例なのです。


● 基本契約とは?

そうすると、まず、基本契約って何?と思うかもしれませんね。

もしお手元にあれば業者との契約書を見てください。 「基本契約」と書いてある業者もいるし、「包括的契約」と書いてある業者もいます。ない人は相談に来られた時にお教えします。

要は最初の取引を始める時の大前提の契約です。


● 最高裁判所の考え

この基本契約が続いている限り、例え、何年中断があっても、或いは会員番号とか支店が変わっても一連で過払い計算というのが最高裁判所の考えなのです。

つまり、一旦完済しても、この大元の契約書を返却したりもしてない限り、一連で計算しなさい!ということになります。


● 最近の争点:過払いの最前線

それに対し、基本契約が違うと、つまり一旦完済した時に基本契約書を返したり、或いはもう一度作り直したりしていると必ずしも、そうならないよ、条件次第だよ、と判例はいっています。

この条件が何かについては大分話は複雑ですので、又今度。

とにかく、いずれにしろ、昔お話した「みなし弁済」とか過払い利息がつくかについて、誰も争わなくなりました。

今、最後の争点として注目されるのが、この基本契約に関する条件なのです。 ですのでとても大事になる事を知って下さい。それではまた。