コラム 債務整理 本格学習その5 ~ 方針決定(具体的な方針)

前回以前の分はこちら:

債務整理 本格学習その1  受任通知


債務整理 本格学習その2  債務調査

債務整理 本格学習その3  利息引きなおしのイメージ

債務整理 本格学習その4  方針決定(一般論)




その他考えるべきこと


前回の項目で一般論を見てきました。ここからは具体的な方針決定の方法を見て行こうと思います。

自分は、具体的に方針(つまり必ずやる過払金回収プラス、任意整理・個人再生・破産のいずれか)を決めるには、以下の要素を考えていきます。


一 金額

①過払い金のみの場合
過払いの業者+残額ある業者併存するが、過払いで全部orほとんどまかなえる
→過払い金回収して終り、or過払い金回収して残りの所を一括減額(してくれない業者もあります)してもらって終りです。


②引き直し額が100万円以下の場合
一般的には分割して返します。(任意整理) 月3万円程度の返済で終わるからです (任意整理は3~5年で返す)

Q破産は出来ないのか?
何か100万円以下だと出来ないと聞いたよ?

A絶対そんな事はありません。一括で返せないなら、破産の条件を満たします。当然破産出来ます。例えば生活保護の方ならばそもそも破産すべきではないで しょうか。 (生活保護の方は、元々生活が苦しいし、借金返済の為に生活保護のお金を使うのはいけない事になっています。)そうでなくても、収入がとても少ない時、払 えない事はないが借金がメンタルに影響して、借金をなくす事が治療になる場合などは是非とも破産すべきでしょう。


Q個人再生はやらないの?
Aあまり意味がありません。


Q何で?借金が5分の1になるんだからよくない?
Aいや、実は個人再生でいくら5分の1になるといっても、100万円まで下がったら、100万円以下にはなりません。(いつも言っているように再生は借金 が5分の1になるのが基本ですが、総額が100万以下には法律上なりません。つまり、引直して90万円が残ったとき、90万円×5分の1=18万円、とは ならず、個人再生ではあくまで総額100万円になるのです。)
ですから、任意整理をすれば十分でしょう。


③100万円~500万円の場合
→どの方法もあります。
破産するのもいいし、どうしても返したければ分割(任意整理)や個人再生も選べます。その場合、300万円以上になれば(任意整理で3~5年で返すとして も、結構な額になってしまう)個人再生する方が(5分の1か、悪くても100万円にはなりますから)楽かもしれません。
気をつけてほしいのは、再生のときに、普通の借金は5分の1にして友人からの借金だけ全部払うということは出来ず、全部か5分の1になってしまいます。


④500万円以上の場合

基本的に破産でしょう。
だって月に10万円でも返しきれませんから(任意整理だと3年~5年で払わないとダメ)。個人再生は下のような致し方のない場合なら良いですが、そうでないなら破産でゼロにしたほうが再出発がしやすいはずです。
但し、気をつけてほしいのは、ここでも友達や親戚にだけ支払って、あとはゼロにする、というのは不可です。全部ゼロにします。


Q不動産があればどうなるの?
A個人再生です。住宅ローンは今まで通り払って、後は他の借金の5分の1を返します。


Q不動産があり、破産が嫌ならいつも個人再生すれば、いいですか?
Aいいえ、再生の難しい人もいます(清算価値保障原則といって、総額の5分の1にならない時があるのです。簡単にいえば、住宅ローンがなかったり、ほとん どない人があたります。)結局、任意整理は額が大きく向かないが、不動産があって破産ができない、そして住宅ローンがかなり残ってる場合はこれ(個人再 生)をやることになります。



二 性格

まず、物事にルーズな人は任意整理も個人再生も不向きです。だって、何年も返すのですから、事務所が皆さんから送ってくるお金を預かる場合(預かり方式) ならすぐ送金が途切れますし、本人送金(本人が直接相手の口座に入れる)方式だとしょっちゅう、業者から「未入」の電話が掛かってきます。破産してさっぱ りすべきです。
又、メンタル的に疲れた方も絶対破産をお勧めします。これで元気になった人は沢山います。

※最もこんな事もありました。「メンタル的に病気がある。ここで返済をやめると、自分の中にポッカリ穴が開く、返す事で自身を取り戻したい。」
~かなり説得しましたが、この答えは変わりませんでした。そこで任意整理を選びました。終了しましたが、今もお元気なようです。
※勿論、過払金のみの場合やほとんど過払いのみの場合は、その人の性格に関係なく単に過払金を回収します。



三 資産

①不動産がある場合
原則破産は向きません。(稀に破産しても、不動産を親族が買い取ってくれる事や裁判所(管財人)が返してくれる事もありますが、これは全く保障のない話で、普通は裁判所(管財人)に売られてしまうのでやめた方がよいです。)
逆にいえば不動産がなければ基本的に破産してよいはずです。

②保険があったら?
保険があると解約返戻金が20万円以上か問題になります。(損害保険や掛け捨ては問題ない。)20万円以下なら破産しても影響ないのですが、20万円を超すと裁判所(管財人)に解約されてしまう恐れがあります。
もっとも、結構物事は柔軟です。契約者貸付という制度を受けて20万円以下にし、貸付けてもらったお金は申立費用・弁護士費用や生活費に使うとか、あるい は20万円だけあきらめて裁判所(管財人)に引渡し、残りは確保するとか(99万円以内なら可能です)、色々あります。


③車あったら?
1.ローンなしの場合
20万円以下の価値ならば無関係(20万円あるか否かの目安は製造されて5年です。) 20万円以上なら、破産する上で残したい時は第三者に買取ってもら い(破産しても車はなくなりません)、使用者として使用させてもらうという事が可能です。失ってもいいなら、破産して裁判所(管財人)に売却されることに なります。


2.ローンありの場合
まずこの場合、裁判所(管財人)の引上げでなくローン会社の引上げを防ぐ必要あります。普通は残したいなら誰かにローンを引受けてもらい、所有権もその人に移し、やはり使用者として使用させてもらう事になります。

※以上の「使用させてもらう」のはあくまでも好意なので、あなたの物ではないのですから、その人とあなたの人間関係がこじれれば保障の限りではありません。


④現金預金・財形貯蓄等がある人
これもまず20万円以下なら問題はありません。20万円以上でも、一部を申立費用・弁護士費用・生活費の不足に取り崩すのは合法です。その結果、20万 円以下になれば問題ありません。又、20万円を超えても②保険と同じように20万だけあきらめて裁判所(管財人)に引渡し、残りをキープする方法もありま す(99万円以内)。それよりも全然多い時は普通そもそも破産しなくてもよいですね。沢山返せる源資があるのですから。



四 資格制限

ひっかかる資格がある人は破産に向きません。 男の人なら警備員さん、女の人なら、保険の外交員さん、両方共通なものに会社の役員、~士の士業等があります。もっともこれはずっと続くのではなく、破産 してチャラ(免責)になり、復権すれば関係ありません。あまり問題視しない方がよいでしょう。



五.絶対に秘密にしておきたい人

破産も個人再生も官報に載りますから「百万が一」見られる事もあります。(普通はないですよ。私も一回しか官報見たことないし、みんなも見たことないで しょう?)ですから、任意整理になるでしょう。最もいつも言うように、どれもブラックリストはブラックです(官報には載らなくても信用情報は傷つく)。 又、任意整理にして官報に載らなくても、現実問題上、業者の社員の内、不心得者が情報を売ってしまえば同じです。



六.親戚、友人の借金が多い人

この人も破産には向きません(友人達にだけ払って業者は0にするという事は出来ない)。 こういう借金を破産にかけると、かなり気まずいですよね。 (その人達に理解があって別にいいよ、と言われれば別です。) 個人再生も5分の1になるので気まずい(友人にだけ100%払い、残りは5分の1というのもダメ)結局、任意整理でしょう。



七.どうしても返したい人

意味が分かりません。いつも言うように親・兄弟でもあるまいし、今まで利息も取られてきて何で「返したい」んでしょうか。一時の感情でなく、破産すべきです。(詳しくは以前のコラムで)
※先述のように、返す事=心の支えにするという思想から任意整理するのは ギリギリOKでしょう



八.プライド的に許さない人

私は今まで一部上場の会社の会社員、地位の高い公務員の破産も随分やりました。又、ひとかどの商売をやられた方の破産もやっています。何も「破産=生活や 所得の低い人ばかり」「破産=失敗者」ではないのです。アメリカのように、「何でも新しくなればよい。何でも踏み倒せ」というのは、確かにこれは下品であ り勿論嫌ですが、かといって「やむを得ない時」(事情があり借金した、無駄使いしたけども反省しているなど)に破産するのは全く好ましい事であると思いま すよ。決して卑屈にはならない!



九.ギャンブルや浪費に狂った人

基本的にギャンブルや浪費も、一時の問題で反省している限り、破産は通ります。免責(チャラ)にもなります。なので、破産するのがベターです。但し、破産の中でも面倒な話になりますので、これは個別に相談時に説明します。



とりあえず、今回は、四つの選択肢の別れ道の説明をしてみました。何か他にもある気がしますのでもし漏れてたらまた、追加します。